潰瘍性大腸炎では、食物繊維は控えるべきという食事指導がされています。そのため、野菜の摂取を抑えている患者も多いと思います。
しかし、食物繊維は腸内環境をキレイにする力を持っているため、最近では症状の悪化が見られないようなら積極的な摂取を進めることもあるようです。
また、潰瘍性大腸炎患者にとったアンケートによると、食物繊維で症状が悪くなるケースは比較的少ないことがわかりました。
腸内環境を改善するための強い味方となる食物繊維。今回は潰瘍性大腸炎と食物繊維の関係について詳しく解説していきたいと思います。
もくじ
食物繊維は汚れた腸をキレイにしてくれる
食物繊維の最も大きな働きとしては、腸内をキレイに掃除してくれることが挙げられます。
食物繊維は消化されずに大腸まで届くため、腸内の悪玉菌や腐敗物を絡め取って排出する力を持っています。
これによって腸内が掃除された状態になり、キレイで健康的な腸を手に入れることができるわけです。
海洋英大腸炎でも症状が悪化しなければ食物繊維は摂取してOK
現在では、潰瘍性大腸炎患者も症状が出ないようなら食物繊維は摂取しても問題ないとされています。
むしろ、食物繊維は腸内環境の改善に大きな影響を与えますので、潰瘍性大腸炎患者にとっては味方になる可能性も大きいです。
また、食物繊維を避けると、必然的に野菜不足になり、ビタミンやミネラルが不足しがちです。そのため、問題なく野菜を食べられる人は、できるだけバランスの良い食事を心がけることがベストです。
食物繊維を摂ることで生まれる3つの効果
ここで、食物繊維が持つ力についてご説明いたします。
食物繊維は優れた整腸作用を持っおり、それによって主に3つの効果を得ることが可能です。
悪玉菌や腐敗物などが絡め取られて排出される
食物繊維は消化されずに残るという性質を持っているため、腸内の悪玉菌や腐敗物を絡めとり便として排出する力を持っています。
これによって、腸内の悪玉菌や有害物質を取り除くことができ、キレイな腸内環境を手に入れることができます。
善玉菌の働きが最大限に高まる
食物繊維は、腸内にいる善玉菌のエサとなる貴重な栄養素です。食物繊維を与えられた善玉菌は活発化し、悪玉菌のそ増殖を抑える力も高まります。
結果的に善玉菌が多く悪玉菌が少ない理想的な腸内環境を手に入れることができるのです。
ちなみに、食物繊維のような善玉菌のエサとなるものを「プレバイオティクス」と呼びます。プレバイオティクスになるのは食物繊維の他にもオリゴ糖があげられ、同じように善玉菌を活性化させる効果を持っています。
プレバイオティクスについてはこちらの記事に詳しくまとめてありますので、よろしければご覧ください。
免疫機能が正常化する
善玉菌の働きとも関連してくるのですが、食物繊維の摂取は免疫機能の正常化をサポートします。
そもそも、人間の免疫機能の70%は腸に集まっています。そして、腸内環境が整っているほど免疫力は高まり、逆に悪化した腸内環境では、免疫が過剰反応してしまうことが研究によってわかっています。さらに、この過剰反応が潰瘍性大腸炎をはじめとする自己免疫疾患の発症に影響を与えているのです。
先ほど食物繊維の摂取によって善玉菌を活性化させると述べましたが、活性化した善玉菌は私たちの腸を強力に正常化してくれます。結果として過剰反応している免疫も正常化し、血便・下痢・腹痛など様々な潰瘍性大腸炎の症状も徐々に改善されるのです。
食物繊維は潰瘍性大腸炎の症状緩和をサポートする
2013年に理研が発表した実験結果では次のような結果がでています。
食物繊維を多く摂らせたマウスには、腸内で「酪酸」という物質が多く発生しました。
この酪酸によって炎症抑制効果のある「制御性T細胞」を増加し、実際にマウスの大腸炎にも抑制が認められました。
参考:理化学研究所
食物繊維は腸内発酵すると「酪酸」という物質を生み出します。これが炎症抑制作用のある「制御性T細胞」を増やし、実際に大腸の炎症を抑制させるということが認められたのです。
この発見は潰瘍性大腸炎が発症するメカニズムの解明や、新たな治療法のヒントとして大きな注目を集めています。
腸内環境を改善することは体質を根本から改善すること
しかしながら、この理研の研究結果はなぜ大きな注目を集めたのでしょうか?
それは、薬では限界があった潰瘍性大腸炎の治療に大きな可能性が生まれたからです。
薬では体質の改善はできない
現在の潰瘍性大腸炎の治療は「対症療法」と言って、今ある症状を薬によって抑えようという目的で行われています。つまり、潰瘍性大腸炎の原因を根本から治すという目的ではないのです。
もちろん潰瘍性大腸炎の原因は現在でもはっきりとわかっていません。しかし、上記の実験結果にも現れている通り、腸内環境の悪化が少なからず発症要因に影響しているということがわかってきました。
そして、腸内環境の改善は薬では決してできません。患者自身の食生活、生活習慣、これらを改善することでしか改善されないのです。
腸内環境を正常にすることで症状が緩和することは証明されつつある
そして、近年になって「糞便移植法」という治療法が登場しました。これは正常な腸内環境の便を患者に移植するという方法です。
この治療法は国内外の様々な医療機関で導入されはじめており、症状緩和に一定の効果を示すことがデータでわかっています。
つまり、腸内環境を正常化することによって症状が改善することが証明されつつあるのです。
食物繊維をとることは安全なのか?
みなさんの中には「食物繊維をとって本当に症状が悪化しないのか?」と心配している方もいらっしゃると思います。
その安全性について調査してみましたので、まずは以下のアンケート結果をご覧ください。
本音で答えて欲しい。
食物繊維の摂取で症状が悪化する時ってある?— fummy|ucのコピーライター (@copy_1nensei) 2017年11月25日
調査に協力してくれた患者様は49名の潰瘍性大腸炎の患者様たち。
結果として、「ぶっちゃけない」「症状がよほど酷くない限りない」とお答えになった方が全体の90%になりました。
このように、食物繊維をとることは食事指導で控えるべきとなっているにもかかわらず、ほとんどの人は症状悪化には関係ないと考えているようです。
ただし、少数ではありますが、10%の方は「確実にある」とお答えになっているので、この意見も無視することはできません。
総括すると「概ね安全であるが、個人差があり症状に影響する場合もある」ということになるかと思います。
腸に負担をかけずに食物繊維を摂取したいなら青汁がオススメ!
では、食物繊維を安全に摂取する方法はないのでしょうか?
すでにご存知かもしれませんが、食物繊維の多い食材は細かく刻むことによって腸への負担をグッと軽くすることができます。これは実際の食事指導でも言われていることです。
つまり、食物繊維を細かくできる食材であれば、比較的安全に食物繊維を摂取できるということです。
そこでオススメなのが青汁です。
青汁は栄養素も高く、食物繊維も豊富です。さらに、健康を意識して製造されているためほとんどの製品に乳酸菌が配合されています。つまり、腸内環境と整える観点から見ると優秀な飲み物ということです。
また、腸壁細胞を回復させる葉酸も豊富に含まれています。ストイックに食事制限をしている方だとどうしても野菜不足になってしまうので、青汁を上手に使って栄養補給することはとても体に良いことです。
また、手作りのミックスジュースも良いです。なぜ「手作り」なのかというと、市販の野菜ジュースなどは美味しさを優先されるため、食物繊維があまり含まれていないからです。一方、手作りのものであれば、食物繊維を無駄なく摂取することができます。
ただし、ミックスジュースを作るにはミキサーが必要となったり手間がかかったりとすこし面倒な部分もあります。
腸内環境の改善には長い時間が必要です。つまり摂取を習慣づけなければなりません。途中で摂取をやめてしまうと、せっかく良くなった腸内環境がまたリセットされてしまう危険性があります。
手軽に摂取することを意識するなら青汁を選ぶのがベストです。その方が長続きし、結果としてメリットも大きくなります。
潰瘍性大腸炎患者に合う青汁の選び方は?
せっかく青汁を飲むなら、潰瘍性大腸炎の症状緩和に効果が高いものを選びたいところです。
そこで、潰瘍性大腸炎に特に効果の高い青汁を見極めるポイントをまとめてみたいと思います。
青汁を選ぶポイントは大きく2つです。
食物繊維が豊富に含まれていること
まず、食物繊維の量は必ずチェックすべきポイントです。
青汁の種類によっては食物繊維の含有量に大きな違いがあります。
いろいろと調査した結果、食物繊維の含有量が5g前後あれば食物繊維が豊富な商品といえることがわかりました。
ですので、食物繊維の含有量をチェックして5g前後ある商品を選ぶようにしてください。
炎症抑制作用のある大麦若葉が原料であること
青汁の原料には様々なものがありますが、大麦若葉が原料のものを選ぶようにしてください。なぜなら、大麦若葉には潰瘍性大腸炎の炎症を抑える効果があるからです。
東洋新薬によると、マウスを使った実験で、大麦若葉を飼料として与えたグループとそうでないグループでは、大麦若葉を与えたグループのほうが大腸の炎症が抑制されたとのことです。
これによって、大麦若葉が潰瘍性大腸炎の炎症抑制作用が証明されました。
つまり、潰瘍性大腸炎患者が青汁を選ぶ基準としては、大麦若葉を原料としているものを選んだ方がいいということです。
潰瘍性大腸炎患者が青汁を選ぶポイントまとめ
以上の2つのポイントをまとめると以下のようになります。
- 食物繊維が5g前後含まれていること
- 大麦若葉を原料として含んでいること
以上が潰瘍性大腸炎に効果的な青汁の選び方です。
潰瘍性大腸炎患者のために選んだオススメの青汁3選!
ひとくちに青汁といっても様々な種類があり、上記のオススメポイントを満たす青汁を探すのも容易ではありません。
ここからは、おすすめポイントをきちんと満たしている青汁を3つ紹介したいと思います。
青汁の効果を高める摂取方法は?
ここからは青汁の効果を高める飲み方を紹介したいと思います。
朝に飲む
青汁の栄養を体に染み渡らせるには、朝に飲むのが最も効果的です。
朝は栄養素が最も体に染み渡りやすい時間帯です。そのため朝に青汁を飲むことで、青汁の効果がより効率的に体に吸収されます。
夜に飲んだからといって効果が大きく変わるわけではないですが、朝に飲む方が栄養効果的にはいいでしょう。
プロバイオティクスも一緒に摂取する
食物繊維を摂取する目的は、腸内の善玉菌に栄養を与えるためでした。そのため、乳酸菌などのプロバイオティクスも一緒に摂取すると、整腸効果は最大値まで高まります。
例えばヨーグルトなどもいいですが、乳酸菌の数を考えるならダントツでサプリメントが効果的です。
潰瘍性大腸炎患者にオススメの乳酸菌サプリについてはこちらの記事でまとめていますので、よろしければご覧ください。
氷で冷やしすぎない
潰瘍性大腸炎患者のお腹は冷えに弱いです。そのため氷で冷やしすぎないように注意してください。
冷蔵庫に冷やしてある水やジュース、牛乳などで薄めて飲むのがいいでしょう。
青汁の飲み方のアレンジ方法は自由自在!
青汁は粉末なため、水以外にも様々な飲み方ができます。今回は特にメジャーなアレンジ方法を5つ紹介いたします。
牛乳・豆乳で割る
数あるアレンジ方法でも最もメジャーな飲み方です。牛乳おかげでまろやかになり、お子さんでも美味しくいただけます。
ただし、潰瘍性大腸炎だと牛乳は乳糖不耐症の方も多いです。そのような場合は豆乳を使っても美味しくいただけます。
りんごジュースで割る
りんごジュースで割ることによってよりスッキリ・さっぱりと味わうことができます。氷を入れて冷やしたいところですが、冷やしすぎてお腹まで冷やさないように注意。
はちみつを入れる
どうしても苦味がダメな方ははちみつをいれるといいでしょう。はちみつはプレバイオティクスであるオリゴ糖を含んでいますので、腸にも嬉しい食材です。
ヨーグルトに混ぜる
ヨーグルトに含まれる乳酸菌と一緒に摂取することによって、整腸効果は最も高い状態になります。腸内環境を整えると言う意味では最強の組み合わせかもしれません。
パスタに混ぜる
これは飲み方ではないですが、パスタに混ぜても美味しくいただけます。他にもお好み焼きに混ぜるなど、様々な摂取方法が開発されています。クックパッドにもいろいろなレシピが乗っているので、組み合わせ次第では無限の可能性があるの楽しめるポイントですね。
まとめ
最後に、本記事のポイントを箇条書きにまとめてみたいと思います。
- 潰瘍性大腸炎患者こそ食物繊維は摂取すべき
- 食物繊維は腸内環境を正常にする力を持っている
- 食物繊維をとることで善玉菌が活性化する
- 食物繊維をとることで悪玉菌や腐敗物が体外に排出される
- 腸内環境が正常化した結果、免疫機能は正常な状態に戻る
- 食物繊維による潰瘍性大腸炎の症状悪化はそれほど心配する必要はない
- 食物繊維を安全に摂取するなら青汁がオススメ
- 青汁は朝に飲むのが良い
- 青汁とプロバイオティクスを一緒に摂ると整腸効果は最大値まで高まる
- 青汁は様々なアレンジ方法があって楽しい
以上です。
結局のところ、食物繊維を摂取しないほうがいいという食事指導は安全をとった考え方なのだと思います。しかし、よほど症状がひどくない限り、食物繊維の摂取によって症状が悪化する心配はいりません。むしろ食物繊維をたくさんとって腸内環境を整えたほうが、潰瘍性大腸炎の症状緩和に繋がります。
その辺は個人の考え方によるところだと思いますが、筆者は食物繊維は積極的に摂取すべきだなと感じました。
潰瘍性大腸炎では、薬以外にも自身の体質を変えていくことが大切です。そのためには食生活の見直し、生活習慣の改善、様々なアプローチ方法が必要となります。
食物繊維の摂取もそのひとつです。
腸内環境を整え、免疫力を高めることで、薬だけに頼らないで潰瘍性大腸炎の寛解に向けて頑張っていきましょう。
fummyさんのブログをいつも拝見させていただいております。
「UC患者が教える潰瘍性大腸炎の食事の正しい知識|食べものと食べ方について」では、非水溶性の固い食物繊維は腸管を傷つけると書かれていましたが、食物繊維は摂った方が良いのでしょうか?
また、青汁に含まれている食物繊維は潰瘍性大腸炎の方が摂取しても問題ないのでしょうか?
お手数ですが教えていただければと思います。
つとーむさん
コメントありがとうございます!また、ブログのほうも何度かご覧いただいているみたいで嬉しいです。
さて、「食物繊維は摂ったほうがいいのか?」という質問への回答になりますが、結論から言えば摂ったほうがいいと思います。なぜなら、食物繊維は腸内環境を改善し、過剰になった免疫機能を正常な状態に戻してくれるからです。
もうひとつの質問「青汁に含まれている食物繊維は潰瘍性大腸炎の方が摂取しても問題ないのでしょうか?」についてです。
青汁に含まれている食物繊維は比較的安心して摂取できます。それは、青汁の食物繊維は細かく刻まれているためです。もし不安なら、成分表に「難消化性デキストリン」と書いてあるものを探してみてください。あれは水溶性食物繊維のことですので、より安心ですよ!
また、この記事にあるtwitterのアンケートにもある通り、食物繊維の摂取で症状が悪化する方は少ないようです。ただし、10%の患者は症状の悪化を感じているので100%安全とは断言できません。そのあたりは記事にも書きましたがご注意ください。
自分は潰瘍性大腸炎患者に必要なのは、食生活と腸内環境の改善だと思っています(医者じゃないので偉そうなことは言えませんが)。
ただし、薬は絶対に飲んだ方がいいです。 自分が言いたいのは「医者の言う通り薬をしっかり飲んで、かつ自分で改善できる部分は取り組む」ということです。
ここからは自分の体験を書かせていただきます。長くなるので読まなくても大丈夫です(笑)。
自分は、発症から4年ほど超ストイックな食事制限を続けていました。
油はほとんど摂取しない(主な摂取元は青魚)。肉は一切摂取しない。野菜や乳製品もほとんど摂取しませんでした。
その甲斐もなく(というか野菜や乳酸菌を取らなかったせいだと今は思っていますが)、一時期大腸の8割ほどまで炎症が広がってしまい、入院生活を送ったことがあります。
その時に10日間の絶食。同時にペンタサの量を増やし体調は少し快方しましたので、退院しました。
絶食して最も驚いたのが、肌がカサカサになったことです。なんだか急に老けたような気がして怖くなりました。
万人に理解してもらえるきっかけではないと自分でも理解していますが、そこで「きちんと栄養を取らねば!」と決意したのをはっきり覚えています。
退院後は野菜は積極的にとるようにしました(肉は相変わらず一切摂取しませんでしたが…笑)。生野菜は最初は怖かったので、茹でた野菜、蒸した野菜など、熱を通した野菜などから始めました。けど結局サラダや千切りキャベツなど生野菜をモリモリ食べてもなんでもなかったです。
それから2週間も経つと、血便がない日が現れるようになりました。下痢もほとんどなかったと記憶しています。自分の場合、潰瘍性大腸炎になってからは下痢よりも血便がストレスでした。だから、最初トイレットペーパーを見て驚きを隠せませんでした。「血がついてない!」。めちゃくちゃ嬉しかったですね。
ピタッと止むということはなかったですが、血が出ない日を継続できる期間が徐々に長くなり、気づいた頃には血便はもうなくなっていました。
食物繊維だけが理由かどうかは断定できませんが、僕は食生活を改善(野菜を意識的に多めに摂取)したことは症状の改善には少なからず関わっていると思っています。
すごーく話が長くなりましたが、野菜の摂取はチャレンジする価値ありです。
実際に理研の研究でも食物繊維が発酵する時の物質(酪酸)が炎症抑制に効果があると示していますからね。
もし不安なら、自分がやったようにクタクタに茹でた、蒸した野菜、または細かく刻んだ野菜などから摂取してみるといいかもしれません。あと少量から始めるのもいいと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
もしまだ不安な点や不明点がありましたらいつでもコメントください!