潰瘍性大腸炎の食事指導では、乳製品は控えるべき食品とされています。
牛乳・ヨーグルト・チーズ……これらの食材を一切断つことは難しいと感じている患者も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、乳製品はすべての患者にNGなのではありません。
また、ヨーグルトや脂肪分の少ない乳製品は腸にかかる負担は少ないとされています。
しかし、このような情報を知らないまま、ばっくりと「乳製品はNG!」と節制している方は多く、乳製品を摂取していいとわかれば食事の幅が広がる方も多いのではないでしょうか。
今回は潰瘍性大腸炎と乳製品の関係についてです。自分は乳製品を摂取していいのかダメなのか、しっかりと勉強して食事の幅を広げてみてください。
もくじ
瘍性大腸炎の食事指導では乳製品は控えるべき食品とされている
現在、潰瘍性大腸炎の食事指導では乳製品の摂取は控えるべきとされています。その理由は大きく分けて2つあります。
乳製品に含まれる「乳糖」が異常発酵すると腸の負担となる
まず、乳製品には「乳糖」と言われる物質が含まれています。この乳糖が異常発酵するせいで、腸内で大量のガスを発生させ腸に負担がかかります。結果、下痢や腹痛などの症状につながるのです。
そもそも、日本人と乳糖は相性が悪いとされています。なぜなら、日本人の大半は乳糖を分解するラクターゼという酵素を十分に持っていないからです。これを乳糖不耐症と言いますが、一般的には乳糖不耐症の人は日本人全体の約7〜8割と言われています。
乳製品に含まれる脂肪分が腸管を刺激する
もうひとつ大きな理由として、乳製品に含まれる脂肪分にあります。脂肪は腸管を刺激し、下痢や腹痛の原因となります。
仮に3.5%の乳脂肪分の牛乳を飲むとすると、一杯200mlに含まれる脂肪は7g。これを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、何杯も飲めば1日の摂取量は軽く15g以上いってしまいます。
また、チーズの脂肪分はさらに多く、100g中30gは脂肪分です。
潰瘍性大腸炎では油の摂取量の目安は1日40g以下。乳脂肪を摂りすぎることは結果的に潰瘍性大腸炎の症状を悪化させる恐れがあるので、注意が必要だと言えるでしょう。
ヨーグルトは乳製品の中でも比較的安全に摂取できる
ちなみに、乳製品の中でもヨーグルトは比較的安全に摂取できる食品です。その理由は以下の2つになります。
乳糖が分解されているためお腹がゴロゴロしにくい
ヨーグルトは、乳酸菌の働きによって乳糖が初めから分解されています。
乳糖が下痢や腹痛の原因となることは先ほど述べました。これに対してヨーグルトは乳糖が分解されていますから、比較的安心して摂取すること可能です。ちなみにチーズも乳酸菌によって乳糖が分解されています。
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするけど、ヨーグルトは平気という人も多いのではないでしょうか?それはヨーグルトの乳糖は乳酸菌によって分解されているので腸への負担が少ないからです。
脂肪がゆっくり腸まで届くため刺激が少ない
ヨーグルトは半固形状態ですので、牛乳などの飲料に比べると腸までゆっくりと届きます。そのため、脂肪が急に腸を刺激することもないため、比較的安全に摂取することができるのです。
摂りすぎは脂肪過多になるので注意!
ただし、摂りすぎにだけは注意してください。
いくら乳糖が分解されており、脂肪がゆっくり届くからといっても、摂りすぎると脂肪分の摂取過多になってしまいます。
ちなみに、プレーンヨーグルトに含まれる脂肪分は100g中3gほどです。牛乳より少し少ないですが、摂りすぎには十分に注意しましょう。
乳酸菌は潰瘍性大腸炎の症状改善に効果を示している
また、ヨーグルトと言えば乳酸菌ですが、乳酸菌は潰瘍性大腸炎の症状を改善するという研究結果も出ています。
まずは以下のグラフをご覧ください。
これは森永乳業が実際に潰瘍性大腸炎患者を対象として行なった実験結果を表したグラフです。
潰瘍性大腸炎の直腸炎型・左側大腸炎型・全体腸炎型それぞれの患者に1日2000億〜3000億個のビフィズス菌を24週間摂取してもらったところ、14名中10名の寛解を確認できたという結果になりました。
乳酸菌を摂取することは腸内環境の改善に繋がります。乳酸菌には悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内環境を整える力があるからです。
ヨーグルトの乳酸菌量で症状改善を期待するのは難しい
ただし、ヨーグルトの乳酸菌量で上記のような症状改善をすぐに期待することは難しいです。
ご覧の通り、森永の実験で投与された乳酸菌量は1日2000〜3000億個。対してヨーグルトに含まれる乳酸菌は100g中100億個です。最低でも2キロのヨーグルトを摂取しなければいけなくなりますので、とても現実的ではありません。
ですので、ヨーグルトの摂取で寛解を期待することは難しいと言えるでしょう。
高濃度の乳酸菌を摂取するならサプリメントで
もし、高濃度の乳酸菌を摂取したいと思うのであればサプリメントが効果的です。もちろん薬もきちんと服用し続けながらの摂取を前提となりますが、高濃度の乳酸菌の摂取は症状改善をサポートすることが確認されています。
ただし、どの乳酸菌サプリを選んでもいいわけではありません。世の中の乳酸菌サプリは便通改善目的で使われるケースが多いため、乳酸菌量が少ないものがほとんどです。
潰瘍性大腸炎にオススメの乳酸菌サプリについては以下の記事が参考になりますので、乳酸菌の力について詳しく知りたい方やサプリ選びの基準について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
長期摂取で腸内環境が変わることは期待できる
しかし、即効的な症状改善が期待できなくとも、日常的な摂取によって腸内環境を整えることは期待することができるでしょう。
潰瘍性大腸炎は、腸内環境が深く関係していると最近の研究によってわかってきました。つまり、食生活などの生活習慣を改善することで腸内環境、さらには体質を根本的に改善する必要があるのです。
しかし、現在の治療は薬での対症療法でしかありません。ここから先は患者自身で考え、体質をどう改善していくか自ら行動する必要があります。
腸内環境を整えるには例えば以下のことが効果があります。
- ヨーグルトなどの発酵食品を進んで摂取する
- 食生活を野菜中心に切り替える
- 食物繊維を進んで摂取する
- 適度な運動を心がける
- 睡眠不足には気をつける
これらはほんの一例です。また、一時的にやってもリセットされてしまいます。定期的に続けることで初めて効果が現れるものですので、根気強く続けることが必要だと言えるでしょう。
お腹に優しくヨーグルトを食べる2つのコツ
お腹に優しくヨーグルトを食べるために、筆者がオススメする2つのコツをご紹介します。
冷やしすぎない
潰瘍性大腸炎だけに限りませんが、冷えすぎたものを食べることはお腹によくありません。基本的にヨーグルトは要冷蔵ですが、「冷えすぎているな〜」と感じる時は、冷蔵庫から出して少し置いてから食べるようにしましょう。
ホットヨーグルトにしてみる
少し抵抗がある人もいるかもしれませんが、ホットヨーグルトにしてみるというのもアリです。
ホットヨーグルトとは、電子レンジで軽く温めたヨーグルトのことです。40度の人肌ぐらいがオススメです。
ホットヨーグルトにするだけでお腹の冷えを防止するだけでなく、以下のような効果を得られます。
- 乳酸菌が活性化する
- 栄養素を吸収率が高まる
また、ホットヨーグルトはお腹の調子を整える力に優れているので美容効果も高いです。
家の電子レンジにもよると思いますが、1分ほど温めるのがちょうどいいです。あとは個々人で調整しながら作って見てください。
砂糖を入れすぎない
砂糖は入れすぎてはいけません。
砂糖は悪玉菌の大好物の一つです。
ですので、せっかく善玉菌を増やそうとヨーグルトを摂取しても砂糖がたっぷり入ったヨーグルトでは悪玉菌の増殖を手助けすることにもなってしまいます。
なるべくプレーンに近い状態で食べたほうが悪玉菌をやっつける効果は高まりますので、砂糖は入れすぎないようにしましょう。
潰瘍性大腸炎患者でも比較的安心して摂取できる乳製品まとめ
ここからは、潰瘍性大腸炎でも安心して摂取できる乳製品を紹介したいと思います。
乳糖不耐症の人向けの牛乳「アカディ」
まずはメグミルクから発売されているアカディです。
この商品は乳糖不耐症の人に向けて作られており、乳糖を約80%カットした商品です。そのため、お腹がゴロゴロしにくい商品となっています。牛乳を飲みたいけどお腹の調子が心配という人にオススメの商品です。
全国のスーパーマーケットなどで購入いただけます。
脂肪分が少ない低脂肪牛乳
牛乳は乳糖もそうですが、脂肪分にも気をつけなければなりません。もし乳糖不耐症でなければ低脂肪乳にすることで脂肪の摂取量を抑えることができます。
筆者は乳糖不耐症ではないので、活動期には低脂肪乳をよく飲んでいました。1週間に1本は必ず飲んでいましたが、摂取による症状悪化を感じたことはありませんでした。
ちなみに低脂肪乳は普通の牛乳よりも安く、腸だけでなくお財布にも優しくてオススメです。
そもそも乳製品じゃない豆乳
これは乳製品ではないですが、牛乳から豆乳に変えてみるのもひとつの手です。
本当に牛乳と同じような感覚で使えます。料理に使ってもよし、そのまま飲んでもよし。ただし、牛乳と同じように脂肪分の摂りすぎには注意しましょう。
脂肪分が少ないカッテージチーズ
カッテージチーズは脂肪分の少ないチーズです。100g中に含まれる脂肪分は約4gほどですから、通常のチーズと比べると85%以上もの脂肪分がカットされています。そのため脂肪によって腸管を刺激するリスクを下げることができます。
また、チーズは乳糖があらかじめ分解されている食材ですので、乳糖不耐症の方でも安心して摂取できます。
脂肪分の摂りすぎに気をつけながら摂取すれば問題ないでしょう。
筆者も活動期にチーズを食べるとしたら必ずカッテージチーズを選ぶようにしていました。結構チーズの風味を感じられて美味しかったです。
脂肪が少ない低脂肪ヨーグルト
ヨーグルトは普通のヨーグルトでも問題ないかと思いますが、脂肪分の気になる人は低脂肪のヨーグルトを選んでみるといいでしょう。
また、画像にあるビヒダスは潰瘍性大腸炎に効果のある乳酸菌BB536が使われていますので、オススメです。
まとめ
最後にこの記事の概要を簡単にまとめてみます
- 潰瘍性大腸炎で乳製品がNGとされているのは乳糖と乳脂肪が原因
- 乳糖不耐症でなければ乳製品は摂取してOK
- ただし、乳脂肪の摂りすぎには気をつける
- ヨーグルトは乳製品の中でも比較的安全に摂取できる食材
- ヨーグルトの乳酸菌は腸内環境の改善に効果がある
以上となります。
乳製品を漠然とダメだと思っていた方は多いと思いますが、個人的な経験から言うと、結構イケます。
特にヨーグルトは比較的安全な乳製品に加え、継続的に摂取することによって腸内環境の改善にも繋がりますので、無理に摂取を拒否する必要はありません。
もし体調が悪化しないようでしたらむしろどんどん摂取したい食材ですね。
脂肪分の摂りすぎには気をつけながら、今後はうまく乳製品を摂取していきましょう。
コメントを残す